Episode 01

小中村政一がFIFA公認カメラマンになった経緯 vol.02

小中村政一がFIFA公認カメラマンになった経緯 vol.02
リオオリンピック男子ハードル、接戦を繰り広げるスペインとジャマイカの選手
リオオリンピックで感じた世界の壁

こうしてFIFA公認になるための道筋を思い描きはじめましたが、何から手を付けて良いかもわからず、とりあえず世界のカメラマンと渡り歩くために国際大会での撮影を経験しようとリオオリンピックへ向けて行動しました。

ここでも運命的な出会いや沢山の人の恩恵にあやかり撮影に行くことができたのですが、いざオリンピック会場で撮影を始めると世界から集まったフリーカメラマンの撮影に対する姿勢に圧倒されてしまったのです。
オリンピックは世界の一流アスリートが集まる祭典、カメラマンも一流どころが集まります。
技術と腕前は当たり前に一流で、事あるごとにフリーであるがゆえのプロ根性や、作品作りに対する意気込みの違いに驚かされました。
日本で飼いならされた私の感覚からすると、撮影可能エリアの中から、いかに良い写真を撮るかを考えるのが普通で、なんら疑問を持つことはないのですが、彼らは競技の邪魔にならない場所を見つけては、その場所で撮影してもよいか許可を求めに行くのです。
許可を求めるどころか「その場所で撮ってはいけない理由を教えてくれ」と、すさまじいまでの積極性を見せます。
この貪欲なまでのプロ根性は称賛に値すべきことで、私もそうあるべきだと積極的に撮影に挑みましたが、オリンピックというハードスケジュールもあいまって、こんな撮影をずっと続けていけるのかと、とてつもない不安が押し寄せました。
リオオリンピックの撮影後は、こうした精神状態が影響して軽い撮影イップスのような症状になってしまったのです。

全米オープンへの挑戦

リオオリンピックの撮影で精神的なショックを受けたせいか、帰国後は世界各国のフリーカメラマンが集う国際大会で撮影する気力が戻りません。
国内では「オリンピックをフリーで撮影してきたカメラマン」としてそれなりにお仕事をいただけるようになりましたが、どうにも自分のタイミングでシャッターが切れなかったり、悶々としながら撮影イップスと戦う日々が続きました。
そんな中、とあるゴルファーの方から専属カメラマンとしてツアーを同行して欲しいとの依頼をいただきました。これは、この後私が再び世界の場で撮影するようになるきっかけとなったお仕事です。
約一年間に渡り、全国ツアーに同行する形でゴルフの写真を撮り続けました。
国内でのお仕事はフリーであることを意識すること無くこなせましたが、多くのフリーカメラマンが活躍する世界をまたいでの撮影となると、リオオリンピックで受けた衝撃が蘇り撮影イップスが再発します。この撮影イップスを克服するには、再度世界の場で撮らなければ克服できないと薄々気がついてはいましたが・・・。
しかし、こうして継続してお仕事をいただけている状況にも甘んじてか、一度海外で戦う怖さを知ってしまった私は、海外での撮影を敬遠し「世界一のスポーツカメラマンになる」という大きな目標を見失いかけてしまいました。

そんな日々を過ごしながらも「FIFA公認になってやる!」と、啖呵を切ってしまたことが頭の片隅から離れませんでした。FIFA公認になるためには、FIFAに近づけるチャンスでもあるWカップロシア大会はなんとしてもクリアしなければなりません。
いよいよWカップの開催まで3ヶ月ほどになった頃、たまたま専属で撮らせていただいていたゴルフ場が「全米オープンのアジア予選」の会場になり撮影の依頼を受けました。 リオオリンピックの撮影で患ったイップスを克服するためには、なんとしても国際大会へ挑戦しなくてはなりません。
ここで結果を出して関係者にアピール出来れば、アメリカ本土で開催される全米オープン本戦も撮影に行けると思い、関係者へ猛烈にアピールしました。
すでに撮影許可の締め切りが過ぎていたにもかかわらず、私の熱意に免じて一度だけチャンスをいただけることになったのです。

全米オープンゴルフアジア予選での石川遼選手

全米オープンからWカップロシア大会へ

スポーツ撮影の中でも一番許可が下りにくく細かいルールの多いゴルフの撮影ですが、国内で1年間撮影し続けた経験を活かして全米オープン本戦でもそれなりに撮影できました。
大好きなサッカーに比べてゴルフにはそこまで思い入れがなかったことが功を奏し、常に落ち着いて撮影できたおかげで、自分としても及第点は達成できたのです。 この状態ならWカップでも勝負できる。
イップス完全克服とまではいきませんでしたが、そう思って全米オープン会場のアメリカからそのままWカップ会場のロシアへ飛び立ちました。

全米オープン、早朝の会場視察での一枚
ルールの多いゴルフ撮影は事前視察が大切です。